僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう:将棋と投資

京都産業大学での講義(講演+対談)をまとめた本.
羽生九段を含め5人が登場しそれぞれ大変面白いのだが, 羽生九段の章に一番感情移入できたのは将棋と投資に共通点が多いからな気がする.
研究をしてリスクを取って勝負の一手を指してしまえば, 次は自分は何もできない相手のターンになる点は大きな共通点だと思っている.
投資もポジションを取ってしまえば, あとはMr. Marketに委ねるしかないので.

例えば, ミスにミスを重ねてしまう理由について延べた ↓ の部分なんかは, リサーチにリサーチを重ねて上司に勧めてポジション作って次の決算がひどかったときに読み返したい.

将棋でいえば, 先の手を考えていくときには, 過去から現在, 未来に向かって一つの流れに載っていることが大切になってきます. 「こういうやり方でいこう」とプランを立てたら, その道筋が時系列でちゃんと理屈が通っていて, 一貫性があるのがいい. ところがミスをすると, それまで積み重ねてきたプランや方針が, すべて崩れた状態になるわけです.
すでに崩れてしまったのですから, それまでの方針は一切通用しない. そのときやらなくてはいけないのは, 「今, 初めてその局面に出会ったのだとしたら」という視点で, どう対応すればよいかを考えることです. それが「その時点から見る」ということです.

いい手について延べた ↓ の部分も, いいポジションの考え方に通じるものがある. 自信満々のアイデアが実は単なるコンセンサストレードで, 需給で反対に持っていかれて悲しいときに読み返しましょう.

つまり, これはいい手だと思って指す手は, あまりいい手じゃないことが多いんですね.

いい加減というか, 「こうしたほうがいい」というのは, 相手から見ても狙いがはっきりしてるわけです. 「こういうふうにやってくるんだな」と, 相手もわかっていますから.